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バリ島テロについて 投稿者:宮田律
 2005年11月04日(金) 15時32分45秒
   インドネシアのバリ島で10月1日夜、22人が犠牲になるという同時多発テロが発生した。バリ島では3年前にも200人余りの死者を出す大規模テロ事件があったが、今回の事件はその現場からわずか数百メートルしか離れていないところでも起こった。このことは、テロは警察力だけでは防ぎようがないことを如実に示している。
   7月7日にロンドンの地下鉄やバスで同時多発テロが発生し世界を震撼させたが、その後国際社会はテロの抑制にどれほどの関心を払い、有効な方策を講じてきたのたのだろうか。今回のバリ島のテロでも事件の捜査に関する国際的な協力は唱えられているものの、テロを根本的に封じるための協力を推進していこうという積極的な声は聞かれてこない。
   バリ島でテロ事件が発生した背景の一つには前回の事件から三年が経過して、豪州の観光客が戻ってきたこともあろう。豪州は9・11後の「対テロ戦争」でアフガニスタン、イラクに軍隊を派遣した国だ。また、欧米的な文化・歴史的背景をもつ豪州人がインドネシアに異なる価値観をもって観光に訪れることに対する反発がインドネシアの一部のムスリム(イスラム教徒)には強いに違いない。
   さらに、米国が対テロ戦争の舞台としたイラク情勢がいっそう混迷を深めていることも、ムスリムの米欧に対する憤りとなって現れている。イラクでは憲法草案の内容をめぐって、スンニ派とシーア派の対立がますます先鋭化するようになり、9月29日にはバグダッド近郊で3件の自爆テロが連続して発生し、百人以上が犠牲となった。特にシーア派が多数派を占めるイラク南部の九つの州で自治が認められれば、シーア派がこれらの州を統合して独立国家をつくり、南部の資源を独占するのではないかという強い懸念がスンニ派にはある。
   また、イラク内務省では、シーア派のSCIRI(イラク・イスラム革命最高評議会)の影響力が強まっているが、内務省の中で治安活動を担うSCIRIの民兵組織がスンニ派の人々を恣意的に逮捕したり、またスンニ派の聖職者たちを暗殺するようになったりしたとスンニ派は訴えている。SCIRIは、1980年代のイラン・イラク戦争中イランに亡命していたが、現在でもイランはSCIRIに経済的支援を与え、またその政治方針に影響を与えていると見られている。イランのイラク政治への介入もシーア派とスンニ派の対立を増幅する要因となった。
   9月上旬に筆者はイスラエルを訪れてきたが、イスラエルはガザから撤退したものの、ヨルダン川西岸ではイスラムの聖地であるエルサレムを取り囲むように、ユダヤ人の入植地が増加しつつあり、会見したハマスや「イスラム聖戦」の指導者たちはイスラエルに対する「抵抗」を継続すると語っていた。パレスチナ人の間では和平に対する一種の絶望感が広がっている様子だった。
   パレスチナやイラクの問題への関心が国際社会全般で低下しつつあるように見えるが、ムスリム同胞が殺害される事態に対してイスラム世界で心を痛める人は多い。イスラム過激派のテロを封じるために、パレスチナ問題、イラクの混乱、またイスラム世界の青年層の貧困問題などに対して国際社会は特に注意を払い、その改善のための協力を積極的に検討し、実現していくべきだろう。
  


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