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イラン核問題について 投稿者:宮田律
 2005年12月20日(火) 11時20分34秒
   イランの核エネルギー開発が米欧諸国との緊張を生むようになり、核開発をめぐるイランと米欧諸国との駆け引きが国際政治の焦点となっている。特にイランで保守強硬派のアフマディネジャード政権が成立したことは、イランの核問題にも微妙な影響を及ぼすようになった。
   イラク戦争でフセイン政権が米英軍の攻撃によってあっさり崩壊したことは、イランに核兵器に対する関心を高めさせることになったかもしれない。イランは米国の「次のターゲット」として自らを意識するようになった。しかし、表面的にはIAEA(国際原子力機関)に協力する姿勢を強調し、2003年12月には核関連施設に対する強制査察に関する追加議定書に調印した。また、イランは昨年11月、英国、フランス、ドイツのEU3カ国と核問題に関する合意に達し、核燃料サイクル活動の期限付停止を自ら申し出た。
   11月中旬にロシアは、イランがロシアにウラン濃縮活動を託すならば、イランによる転換作業を認めるという提案を行ったが、それに対して米国、さらに英独仏が主導するEU諸国は支持を与えた。11月24日から始まったIAEAの定例理事会(35カ国)では、イランの核問題を国連安保理に付託しない方針となった。ロシアの妥協案が提出されたため、ロシアのイランへの働きかけを見守る方針がとられた。
   しかし、アフマディネジャード大統領のイランには、核問題について妥協する姿勢が見られない。フランスのドストブラジ外相は、12月5日、全欧安保協力機構の会議で、「イランはあくまで国内でのウラン濃縮を主張し、またロシアの提案も一方的に拒否した」と述べ、イランの姿勢に対する反発をあらわにした。また、イラン政府は12月4日の閣議で、国内2カ所目となる原子力発電所を新たにイラクとの国境にある南西部フゼスタン州に建設することを決定した。
   アフマディネジャード政権の核エネルギー開発についての強硬な姿勢は、国連による経済制裁も確実視させるようになっている。イランが核エネルギーを開発する中で、大統領による「イスラエル抹殺」発言も10月下旬に飛び出した。また、バスィージュ(イスラム革命の原理に忠実な民兵組織)などが中心になってイスラエルに対する自爆攻撃部隊も結成されている。イランの核開発、またアフマディネジャード政権の外交姿勢に、イスラエルのネタニヤフ元首相は、12月4日、イランの核開発阻止のためにその核関連施設に対する軍事攻撃も視野に入れるべきだと主張した。イスラエルや、またその同盟国である米国はイランをますます危険視するようになっている。
   核問題に関する対外的な危機の創出はイラン・イスラム共和国体制が国民を引き締める上でも必要なことだ。アフマディネジャード政権は「反米・反イスラエル」や「被抑圧者の救済」など革命の精神に立ち返ることによって、イスラム共和国体制下で生まれた矛盾を克服しようとしている。ホメイニ師時代のイランがそうであったように、国民の体制への求心力を維持するために、米欧諸国やイスラエルとの対決が強調され、それが米国やイスラエルとの軍事的衝突の可能性も含めて国際社会の重大な緊張要因となっていくに違いない。
  


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