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アメリカのイラク政策について 投稿者:宮田律
 2007年01月24日(水) 19時10分02秒
  
   1月10日、ブッシュ大統領が新しいイラク戦略を発表した。2万人以上の米兵の増派を決定し、武力によって治安を回復させる考えを改めて明らかにした。また、経済支援による雇用の創出を訴えたものの、治安が回復しない中では雇用の拡大は不可能だ。イラク政府が治安を回復することができなければ、米国はイラクへの支援を停止するとも述べた。多くのイラク人にはイラクを滅茶苦茶にした米国の大統領にそのような発言をする資格があるのかという思いがよぎったことだろう。
   12月30日、4半世紀にわたってイラクに君臨し続けたサダム・フセイン元大統領の死刑が執行された。死刑判決は、1982年イラク中部ドゥジャイル村でシーア派住民148人を殺害したことに対する「人道に対する罪」と認定されたものであった。元大統領の処刑によって、九〇年のクウェート侵攻や1988年3月にクルド人約5000人が毒ガスで殺害されたハラブジャ事件なども公訴が取り下げられることになった。死刑執行は、フセイン元大統領の「犯した罪」やまたかつての米国との親密な関係が解明されることがなくなったことを意味する。
   米国は「中東民主化」を唱えたものの、フセイン政権崩壊後に成立したイラク政府は、拙速と思われるフセイン裁判が示す通り、真の民主主義のあり方とはほど遠い。米軍の占領下で処刑が行われたことは、フセイン支持のスンニ派と、シーア派の対立を深めるばかりか、米国に対するテロをも増加させるものであり、米国の国益とは全くならない。それでもブッシュ政権は死刑判決をイラクにおける法による支配の確立の成果と支持する声明を出している。
   オサマ・ビンラディンが首謀者とされる9・11の同時多発テロは、市民の殺害を禁じ、婦女子を守らなければならないとするイスラムの教義からすれば、正当性がないものだった。にもかかわらず、米国はアルカーイダの主張をムスリムの一般市民から切り離すことに成功しなかった。罪のない人々を殺害する米国の対テロ戦争は一般のムスリムをアルカーイダの側につけることになってしまっている。
   イラクで活動するイスラム武装集団や過激派は、米軍にできるだけ多くの損害を与え、イラクを安定させないことで米軍のイラクからの撤退を考えている。イラクが混迷したまま米軍が撤退することは「信仰の偉大な勝利」とイスラム世界で認識されるだろう。米政府は、イラクへの米軍の増派を決定し、イラク社会の安定を図っているものの、米軍の増派でイラク政治が安定に向かうという保証は全くない。フセイン元大統領が死刑に処せられ、イラクへの米軍の増派が決定されたものの、イラク戦争は意義のない戦争であったことをますます露呈するようになっている。
  


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