[書き込み一覧を表示]

宮田律の掲示板


 掲示板です

投稿元記事:
パキスタン・アフガニスタンの現況について 投稿者:宮田
 2010年05月30日(日) 17時41分53秒
  2月初旬から中旬にかけてアメリカ・オバマ政権が対テロ戦争の主戦場と考え、タリバンがともに活動するパキスタン、アフガニスタンを訪れた。
  イスラマバード市内のセキュリティは昨年二月に訪れた時に比べるとはるかに厳重になった。コンクリートのバリケードでチェックポイントがつくられ、イスラマバード市内に入る車両がチェックされる。パキスタンのタリバン(パキスタン・タリバン運動:TTP)は、アフガニスタンのタリバンとは違って、米軍など外国軍との戦闘よりも、パキスタン政府の親米姿勢に反発し、パキスタン国内でのテロ活動に力点を置いてきた。
  アメリカはアフガニスタンへの兵力の増強を決定したが、TTPもまたオバマ政権の対テロ戦争の攻撃目標となっている。米軍の無人偵察機によるミサイル攻撃は精度を増すようになり、TTPの有力な指導者の殺害が頻繁に行われるようになった。昨年から今年にかけてTTPの有力な指導者が相次いで殺害され、組織の弱体化が指摘されている。TTPの活動拠点は、アフガニスタンとの国境地帯にある「部族地域」だが、TTPの部族地域支配は、強圧的で、いっそうの混乱と無秩序をもたらした。部族地域はパキスタンでは最も居住環境が劣悪なところとなっている。
  TTPとは対照的に、アフガニスタン・タリバンは、パキスタンにとって「資産」である。アフガニスタンで親パキスタンの姿勢をとるタリバン政権が復活することは、パキスタンが宿敵国家であるインドに対抗するうえで好都合といえる。アフガニスタンでタリバンが米軍やNATO軍に対して用いるIED(路肩爆弾)製造の材料はパキスタンの部族地域から入っているが、これもパキスタン軍は黙認している。
  パキスタンに滞在している間に、アフガニスタンの実情を見たくなったが、地方は治安が悪いというので、首都カブールとその周辺のみを訪れることにした。アフガニスタンのカブールの空港に着くと、ポーターが勝手にスーツケースを運び出した。ポーターが迎えの車にスーツケースを入れた後で、一ドル紙幣を渡したら、ひどく不満そうな顔を見せた。聞くと、五ドルが相場だそうだ。カブールの人間は、金に異様に執着するようになっている。カブールは、支援団体や軍関係者の外国人が金を落とし、ミニバブルともいえる状態になった。
  アメリカは、アフガン戦争でタリバン支配を終わらせたが、アフガニスタン人はさらにみじめな状態になった。現在、アフガニスタンでは食料、インフラ、保健衛生、職がまったく十分ではなく、生活苦がタリバンの求心力を高めている。こうした問題にアフガニスタン政府は改善策をまったく講じてないのが実情だ。
  アフガニスタンの治安の悪さが国際社会の支援を困難にさせている。鳩山政権は今後5年間でアフガニスタンに対する五〇億ドルの支援を約束した。腐敗で悪名高いカルザイ現政権に対して復興資金を与えても、どれほどの効果が望めるだろうか。日本は戦後賠償でインドネシアから多くの留学生を受け入れ、それがインドネシアにおける良好な対日感情の背景となり、インドネシアの発展にも役立った。アフガニスタンやパキスタンに日本人を送り、支援活動を行うことが難しいならば、アフガニスタンやパキスタンの青年たちを日本に招き、教育や技術訓練を施したらどうだろう。それが、暴力が吹き荒れるこれら二国に、将来への希望をもたらすことになると思うのだが。
  


投稿者: メールアドレス:
内容:






eucaly.net FreeBBS Version.3.0.0 / By eucalyptus. 2002