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レシャード・カレッド著『知ってほしいアフガニスタン』書評 投稿者:宮田律
 2010年05月30日(日) 17時57分17秒
   昨年誕生したアメリカのオバマ政権は対テロ戦争の主戦場をイラクからアフガニスタンに移行した。しかし、ブッシュ政権が戦争でテロをいっそう増殖したように、戦争はテロの抑制にまったくならかった。
  アフガニスタン人医師の著者が回想するように、アフガニスタンは平和で、美しい国だった。そのアフガニスタンの安寧や秩序を奪ったのは、オバマ大統領のような外からの介入によってアフガン政治に変化をもたらそうとする姿勢や政策だった。
   著者によれば、インド洋での補給艦活動に莫大な資金を使うならば、武器や麻薬の流通を封じるための国境の管理を支援することのほうがはるかに重要だという。民主党政権が成立してこの補給艦活動は停止することになった。
  鳩山政権は今後五年間で五〇億ドルの支援を行うという公約を行った。しかし、著者がいうように、これまでの日本の援助資金がどのように使われ、役立てられたかを検証することになしに支援していくのはまったくの無益だろう。日本が中心になって元兵士たちの武装解除を行ったが、その兵士たちの社会復帰の実情を調査する必要があるというのも著者の主張である。
   今後のアフガニスタンの安定や秩序づくりのためには、国内各勢力や周辺諸国を含めた話し合いによる合意づくりが必要だという著者の主張には首肯できる。アフガニスタンでは伝統的にロヤ・ジルガで政治・社会問題の解決を図ってきた。国際社会に求められているのは、紛争を解決しようとするアフガニスタン人の努力を促したり、そのための自助努力を後押ししていったりすることだ。
   欧米人や日本人にはないアフガニスタンの事情や、そこで生活する人々の心情が、アフガニスタン人が書いているからこそよく分かる。対アフガン政策にかかわる人たちには必読書といえるだろう。
  


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